渋滞 #poem

大樹の陰で
蝉が元気に鳴き

田んぼの片隅で
蛙も元気に鳴き

力及ばなかった球児たちは
相手校の校歌を聞きながら泣く

そんな時期に
多くの者たちは
墓参りのため故郷へ帰るらしい

驚くべきことに
そのような風習が
全国一斉に行われるものだから

主要な道という道は
故郷へ帰ろうとする車で
渋滞するのも無理はなかろう

そんな大蛇のような
渋滞に巻き込まれた車中が
明るい雰囲気であるはずもなく

 都道府県ごとが難しいとしても
 せめて地方ごとに時期をずらせば
 こんな渋滞は解消されるに違いない

助手席のひとりが
愚痴をこぼせば

 そんな風に分けたところで
 そこへ続く主要な道路は同じなのだから
 渋滞が解消されるとは考えにくい

 苗字の頭文字ごとに
 例えばあ行、か行、さ行ごとに
 時期を分ける方が現実的であろう

後部座席のひとりが
代替案を口にする

 人数の多い苗字を考慮すれば
 さ行、た行にとって
 その案は不公平ではなかろうか

 親族一同が集まることに意味があるため
 苗字で分けるのは本末転倒であろう
 やはり全国一斉にする他あるまい

運転席のひとりが
話を元に戻してしまう

誰のせいでもなく
再び車内が
重たい空気に包まれた

それから
しばらくして

時計の針はそれなりに進んだものの
車は僅かに進んだに過ぎなかった

大して腹は空いてはいないものの
食事の時間も大きく過ぎており

準備しておいた果物やら菓子やらを
彼らは車内で食べることにした
車内が甘い香りに包まれた

それから
またしばらくして

時計の針はそれなりに進んだものの
車は僅かに進んだに過ぎなかった

山ほどあった果物やら菓子やらも
いつの間にやら平らげてしまい
彼らは疲労と退屈とで随分参っていた

 どのような形であれ
 墓参りの時期は
 やはりずらした方が良いと思う

助手席のひとりが
溜息まじりに呟(つぶや)くと

渋滞に霹靂(へきれき)したのか
残る二人も頷いて賛成の意を唱える

彼らが出発してから
とうに三日が過ぎていたのだが

目的地まで
まだ半分も近づいていないのだから
再び愚痴を言うのも無理はなく

 この調子だと正直
 間に合わないかも知れない

 息子たちはもうすぐ
 墓にやってくると言うのに

後部座席のひとりが
腕時計を見ながら
年甲斐もなく悲しみの声をあげる

他の二人もまったく同じ気持ちだった

それから
しばらくして

時計の針はそれなりに進んだものの
やはり車は僅かに進んだに過ぎなかった

遂に後部座席のひとりが
この状況に耐え切れず
おいおいと泣き始めてしまった

助手席のひとりが懸命に慰めるも
後部座席から聞こえてくる泣き声は
一向に止む気配を見せなかった

ずっと黙って前を見ていた
運転席のひとりが
静かに口を開く

 今年は我々がこちら側に来て
 最初の盆だ

 ここまで渋滞がひどいものだとは
 誰が予想出来たであろう

 現世の息子たちと会うのは諦めて
 来年はもっと早く出発しよう

言い終わるや否や
彼らを乗せた車は脇道に入り
渋滞した車線とは
反対のそれに回り込む

そしてあっという間に
出発した場所へと
走り去ってしまったのだった

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