背中にメス

おそらく、
生まれて初めて
刃物で背中を切られました

背中の傷は武士の恥、と聞きますが
僕は武士ではないので全く問題ございません

とある晩、
背中に何か違和感を覚え
おそるおそる触れてみると
コリコリとした異物をふたつほどあり

ちなみに、戦国時代の武士たちは
こういうコリコリしたものを
どう表現するのでしょうか

しばらく日本を離れることが決まっており

国外で悪化してしまうと
何かと不都合が多そうなので

ここは腹を決めて
平日の朝、眠い目をこすり
背中を見せに医者の元へ向かいました

じゃ、切りますかと

出会って数分しか経っていないのに
背中を刃物で切ろうとする
不届きな医者に対し

ここで怯んでは武士の名が廃ると
じゃ、切りましょうと
ふたつ返事をし

複雑に入り組んだ現代社会であるかのような
拙者の背中には鋭いメスが入れられて

とりあえず
背中のコリコリは無事に
体内から取り除かれました

それなりの痛みに耐え
よく頑張った、感動したと
自分を褒めたい気持ちになりつつ

病室を出ようとする拙者の背後から
不届きな医者が放った一言

そもそもの原因は
バイ菌が入ったからなのですが
別に寝床が不潔というわけではなく
どなたでも感染する可能性があるのでご安心を

という優しい刃で
拙者の胸は
深くえぐられたのでござる